窯変 源氏物語〈10〉横笛・鈴虫・夕霧・御法・幻 (中公文庫)
橋本 治 /
中央公論社
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カスタマーレビュー
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光源氏の晩年 
(2007-10-28)
若い頃は傲慢で美しさに物を言わせ、数々の女性と交渉をもってきた光源氏も、晩年には若い正妻の女三の宮には出家され、最愛の紫の上に先立たれ、公的生活を引退してふがいなく女房たちとだけ思い出に浸って暮らす。
原作を読んでもうんざりするほど情けない源氏の姿なのだが、一人称の本作でますますそう思った。
いくらご主人様にとって最愛の女性でも、一年中こうして愚痴られては、おつきの女房たちにしてみたら「仕えるのもラクじゃないよな」というところじゃないだろうか。
女君たちにしたって、先に出家する朧月夜はじめ、朝顔、女三の宮、在俗のままだがとっくに夫婦としてのつながりの耐えた花散里、明石の君、最初から源氏との接触を拒否し続けた秋好中宮、彼女らって実は本当は源氏がキライだったんじゃないかなと思う。
それくらい女に人気のない光源氏なのである。
私だってこんなグチだらけで傲慢なご主人より、サバサバした気風で人のために働くのが大好きという致仕太政大臣のほうがいい。
そして、光の物語は終わる。 
(2003-07-21)
ついに、病魔に勝てず息絶える「紫の上」。彼女を失った光は、もはや光ではない。自分で育てた大事な片翼を失って、光も全てを捨てて、世を捨てる。御法(みのり)と幻(まぼろし)。
この巻はこの二帖につきるが、他の帖にも少しだけ。
横笛(よこぶえ)。柏木の不遇の未亡人、落ち葉の宮が日参する夕霧に柏木の遺品の横笛を送る。本当の相続人は、柏木と女三宮との不義の子(薫)であることを、夕霧は知っている。
鈴虫(鈴虫)。帝が八月の十五夜、物忌みとなった。源氏の処に集まった殿上人と、冷泉の上皇に「堅苦しくなく」十五夜の祝いをしに行く。鈴虫は、女三宮に急ごしらえの秋の庭をつくり、鈴虫を放す処から由来する。
そして「夕霧(ゆうぎり)」。私たちが「夕霧」と呼ぶ男は実はこの帖!まで存在しない。落ち葉の宮に不器用な恋をし、雲井の雁と藤の典待のあいだにたくさんの子どもをもうけた左大将こそ、この帖になぞられて「夕霧」と呼ぶ。
次巻からは宇治十帖である。主人公となるべき薫も三の宮もこの巻では小さな子どもである。若い人々の物語として、源氏物語はまた新たに語られることになる。
紫の上は、本当にすばらしい女性だったと思う。